サイエンス

2024.05.04 18:00

インドの謎化石、ティラノサウルスよりでかい新種の巨大ヘビと判明

安井克至
2042

アナコンダのような待ち伏せ型捕食者か

化石は2005年に、バジパイと教え子たちのチームによって炭鉱で発掘されていた。チームはもともと初期のクジラ類の化石を探していて、クジラやほかの脊椎動物の化石と一緒に出土したという。当時はこの化石はワニのものだと考えていたそうだ。

2023年になって、バジパイとダッタはこの化石の本格的な調査に着手した。ヘビの化石だとわかったときには「まずその異常に大きなサイズに驚かされました」と、取材へのメールの回答で振り返っている。

ふたりは、ヴァースキはアナコンダやニシキヘビのような動きの遅い待ち伏せ型の捕食者で、獲物を締め上げて仕留めていたのではないかと推測している。ヴァースキはまた、マッツォイア科のヘビが地球上にどう広がったのかを知る手がかりにもなるという。彼らによれば、ヴァースキはインド亜大陸で誕生し、南欧を経由しておよそ5600万〜3400万年前にアフリカに広がったと考えられる。

「わたしたちの推測では、ヴァースキは、白亜紀後期から暁新世にかけて、孤立した島大陸だった時代のインドで進化したヘビの系統に属しています」とバジパイたちはメールに記している。「ヴァースキの体の大きさからは、熱帯地方が現在よりも暖かかったことがうかがわれます。なぜなら、外界の温度の上昇と、変温動物の体の大きさとの間には相関関係があることが確認されているからです」

絶滅した巨大ヘビ「ティタノボア」との関係は?

ヴァースキの大きさは、絶滅した別の巨大ヘビ「ティタノボア」に匹敵し、形も似ていたようだ。ティタノボアは6000万年前の南米の熱帯に生息し、成長すると通常、全長は13.8メートルほどに達した。

ヘビの専門家である豪クイーンズランド大学環境学部のブライアン・フライ教授は、新たに同定されたヘビを「収斂進化」の一例と説明している。収斂進化とは、系統の異なる生物が、似た自然環境に適応するため同じような形質や行動を独自に進化させる現象だ。ヴァースキとティタノボアは、水中で待ち伏せして捕食するという同様の生態的地位(ニッチ)を占めるという。

フライはインタビューで、ヴァースキの同定では「利用可能なニッチがある場合、類似した形態型の進化には正の選択圧がかかるという基本的な生物学的原理がはっきり示されました」と述べ、「興味深く非常に重要な発見です」と今回の研究を高く評価している。

フライは今回の研究には関わっていないが、自身の率いるチームは今年、アマゾン川流域でアナコンダの新種「キタオオアナコンダ(Northern Green Anaconda)」を発見したと発表している。今年はヘビの「当たり年」のようだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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